1/250の確率の講習会
 

6月19日は第2回安曇野テンカラ講習会でした。会場は安曇野市を流れる烏川の穂高橋上流ですが、前日までカラカラの川だったようですが(だからカラス川というのか)、天気は回復したものの、なんと着いてみれば濁流一歩手前で、とても釣りができる状態ではありません。

仕方ないので、水が落ちるまで主催者の「山のたこ平」を借りてテンカラ勉強会となりました。「テンカラの文化学」ということで、日本と西洋の釣り文化の違いやテンカラの語源と起源、職漁師のテンカラの歴史など、さらにテンカラはスポーツであることなどを1時間、パワーポイントを使って話しました。

渓流の毛バリ釣りがいつからあったかわかりませんが、私は江戸はおろか、室町、平安、あるいはもっと昔まで遡るのではないかと推測しています。現在、もっとも古いイワナ釣りの記録は以下であるとされています。

元禄7年(1694年)「加賀藩奥山廻役・宗兵衛記録」(甲山五一 釣り文化5号)

「黒部川でイワナ釣りしていた5人組をみつけ小屋を壊した上で釈放した」という内容ですが、これが毛バリだったか餌釣りだったかは不明のようです。

 

推測ですが、これは毛バリ釣りではなかったかと思います。というのは黒部では毛バリによるイワナ釣りが職漁として行われており、明治11年の立山登山日記にその最古の記述があることからわかるように黒部川はイワナの宝庫だったからです。

 

黒部川でイワナ釣りができるのは夏だけ。夏までは雪や雪代で入ることすらできないでしょう。小屋がけしていたのはおそらくそこを根城にして釣ったイワナを焼き枯らしにしていた職漁師だったからではないかと。一人でやるより5人の方が効率的です。

 

水が満々とある黒部川で餌釣りをするのは効率的ではないし、餌もとれないでしょう。となれば毛バリを使っていたのではという推測です。毛バリだったという記述がない以上推測になりますが可能性は高いのでは。もしそうであれば江戸よりもっと古くからあってもおかしくない・・・。そんな内容の話です。

 

午後になって多少、水が引いたのでソレッと川にでかけました。今回の参加者のために主催者、漁協の協力でニジマスを放流しました。その数250匹。数えたわけではないですが。「では竿とラインの結び方は・・・皆さん、できましたか」「ではキャスティングに移ります」というとき放流車からホースでトボドボと。

 

「グリップは軽く握って、跳ね上げは・・・」なんて言っているとき、「キャスティングより釣ってください。魚が流されてますから、早く・・・」

 

そうなるとキャスティングどころではありません。キャスティングのキャもしないうちに実釣です。ところが、すでにおわかりようにウンスンです。ウンもスンもありません。魚はいるのですが、流れが強いので、流れにしがみ着くのに精一杯で毛バリどころではありません。くわえておそらく養魚場の水温と源流の北アルプスの増水した川との温度差が大きくて、魚は冷蔵庫状態だったのでしょう。魚は見えるのにまったく反応しません。

 

テンカラが初めてという人が何人もいるのに。「なんなんだお前たちは・・」と魚をキツクしかってやりましたので参加者の皆さん、これで勘弁してください。本当に釣れないのです。あの手、この手、猫の手、奥の手 、孫の手を使ってもウンスン。その中で唯一、山岸さんが貴重な1匹を釣りました。1/250の確率。今ならナンバーズなら当たるかもしれません。

 

昨年、第1回キャスティング世界大会で準優勝した黒岩さんが息子さんと参加しました。187cmの長身のイケメン高校3年生。色の黒いところもお父さん似です。若いだけあって最後まで粘ってました。お父さんを抜くのは時間の問題でしょう。

 

全員ボーズのボー状態で講習会は終わりました。こうなれば夜のサッカーオランダ戦が楽しみだとモードの切り替えの早い私です。

 

夕食の後、ナイフの桑田さんが家庭のステンレス包丁のとぎ方講習をしてくれました。真っ平らな石の上にサンドペーパーを張っただけのもので砥げるようで、桑田さんからプレゼントされた砥ぎセットで、さっそく家の包丁を砥いでみました。家内の反応はまだありません。ゴールドブレンドな人(違いがわかる)ではないかも。

 

翌日、山のたこ平の辻谷さんが中房川を案内してくれました。辻谷さんの釣り仲間はルアー専門です。たこ平から5分で中房の中流域。途中で鉄のつり橋を渡りました。高さ8mにある幅5cmの踏み板をわたっていきます。板ぐらい渡せよと思いますが、ビビル大木では渡れないでしょうね。ここも増水でルアー、テンカラとも撃沈でした。

 

ちなみになぜ「山のたこ平」なのか。社長が寅さん映画に出るたこ社長だからと思ったのですが、お客さんの「多・幸・平和」を祈る気持ちからとのことですが、後づけのような気もしないでもないでもないような気もします。

 

桑田さんのステンレス包丁の砥ぎ(動画)