翌日、東京から通訳をしてくれるダニエルの友人の横田さんが合流した。アメリカではチカラである。チカラインターナショナルという会社を経営している。奥さんはレベッカさんと言い、清楚で明るい人である。レベッカさんが私にも漢字が欲しいというので「麗別華」に。うるわしい特別な花の意味(のつもり)である。
そこにイタリア人のウビが合流し、アメリカ、イタリア、日本、そして国籍不明の雲
国際(私のこと)も加わって国際的な集まりになった。ウビは英語もペラペラで、ダニエルと同様に相手を立て、自分は一歩下がる人柄なので二人はすぐに意気投合してさっそく近くの渓流へGO。
ここは御岳山から直流の川で、水が冷たいことで有名である。渓流の石も苔におおわれ安定した渓流であることがわかる。この季節、ほとんどがイワナである。谷が深く、石が黒いだけに色黒のヌメッ、ネトッとしたヤマトイワナ系が釣れる。
ダニエルもウビも数匹づつ釣ってランチに。午後は横田さんに付きっきりでテンカラを。Todayの横田さんは、これが3タイムスのテンカラフィッシングである。2ピープルがキャストしてスルーした後を、27cmのイワナをファインフックさせたものの、キャッチするビフォアーにナチュラルリリースしてしまい、ピクチャーをテイクできなかった。横田さんといると、ルー大柴になってしまう(笑)。最近、このネタでやってないけど。
夜はダニエル歓迎のバーベQである。Mtおんたけの庭で13名で飛騨牛を焼く。さすがに飛騨牛である。口の中で溶けるように柔らかい。さらにOさんがステーキ1Kgをレアで焼いてくれた。これがまた美味い。
Oさんとは今年の私の毛バリ巻き教室に参加して以来のお付き合いだが、いつもは陽気なのに今回は浮かない表情である。俺たち転勤族だそうで、数日前に激戦区の東京転勤の辞令が出たそうで、せっかく皆さんと知りあったのに、しかもテンカラに行こうと思っても大変な東京になったことでガックリのようだ。
まぁ、それは遊びだからよしとしても、激戦区に投入される仕事のハードさを思うと明るい顔も曇り勝ちになってしまうようだ。Oさん、激戦区から声がかかるのはそれだけOさんへ期待が大きいことだからと言ったけど、なんの慰めにもなっていないだろう。
さすが開田高原である。8月、9月は人の住むところでは日本で最低気温が記録されるところだそうで、この時点で16℃である。私は半袖でちょうどいいがフリースまで着ているのは久保さんである。トド・ヨッスイさんは身体に厚い脂肪をまとっているのに寒い、寒いの連発で、すでに3枚重ねである。
明けての朝は大雨男の威力発揮で、朝から雨。誰も釣りに行かない。そこにテンが庭のブルーベリーを食べに来た。うまいものは知っているとみえて、あっちの木、こっちの枝に飛び移り、デザートに夢中である。
昔からテンを見るのは縁起がいいと言われている。テンカラはテンからなので、ソレッと釣りに出かければ釣れること間違いなしなのだが、しのつく雨でやる気が出ず、われらもアイスクリームを食べて開田を後にした。
帰り路に阿寺川に寄った。2人に阿寺川の渓相と阿寺ブルーの流れを見てほしかったからだ。晴れていれば空を映してすばらしい阿寺ブルーだったのに、小雨と増水でちょっと残念。
ところで二人の日本語は日本の若者言葉そのものである。ダイジョーブの連発である。
「ダニエル、ドーナツ食べる?」「ダイジョーブ」「どっち?」「ダイジョーブ、ダイジョーブ」
「それっていらないってこと?」「ダイジョーブ」
「ウビ、おなか減ってない?」「ダイジョーブ」「減ってないの?」「ダイジョーブ」
学生たちの言葉でもダイジョーブは頻繁に出てくる。ダイジョーブはいらない、ノーなのだが、直接的にいらないと言えば相手の感情に触るのではないかという配慮から大丈夫ということで、やんわり、いらないといっているのだろう。最近の日本社会の過度とも思える気遣いが言葉にも反映したものだろう。
いるのか、いらないのか、どっちなんだと思うので大学でも学生が使うと、その言葉はおかしいと指摘するが、若者どうしこれで十分通用し、むしろ常用しているようだ。歳寄りにはイライラする言葉である。
ダニエルも、ウビもまだ日本語はよくできないのに(ウビは結構できる)、憶えた言葉がダイジョーブというところが面白い。若者どうし、国籍に関係なくすぐに感染するのだろう。
大丈夫はノーのことですよ、そこのお父さん。
「魚釣れた?」
「大丈夫です」
「はぁ?」
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