イワナの二題

 

アマゴ(ヤマメ)とイワナ、どちらが好きかアンケートをとればイワナに軍配があがるかもしれない。好きな理由はさまざまだろうが、地方や水系の変異が大きく、同じイワナといってもこうも違うのか、その違いが面白いというのも理由の1つだろう。

鮎も日本を代表する美しい魚であるが、金太郎アメのようにそれぞれの魚に違いはまったくない。ハゼやサバ、サンマ、カツオにも個性がない。数が多い魚には個体差は必要ないのだろう。

アマゴやヤマメも、地域差や魚体差が大きいが、イワナほどではないように思う。イワナの個体差は大きい。だからこそ、「綺麗だ!」などとほめるのだが、オスのイワナにしてみれば綺麗とほめられて恥ずかしいかもしれない。

この1週間でこんなことがあった。最初の川は伊那谷である。 かってみたことのない美しい朝やけに、伊那谷から見る南アルプスは黒いシルエットとなっていた。わずか1分程度の貴重な出会いであった。

この渓には毎年、一度は訪れるが、自分の体力が試されるような大石ゴロゴロの渓である。そこは堰堤のコンクリが壊れて穴になったポイントから出たイワナで、真っ暗な穴の中にいるのに、なぜ日焼けしたのか、ナマズかと思えるほど真黒である。

おそらく、2年ぐらい穴暮らしをしていたのだろう。体長は26cm程度のニッコーである。不思議なことに写真を撮っている間に、体色が黒から茶色にどんどん変っていったのだ。酸欠なのか、綺麗と言われて恥ずかしかったのか、あるいは急に明るいところに出たので、まぶしかったのだろうか。写真を撮り終わる1、2分の間に体色は黒からこげ茶色にかわっている。

この日はここ数年、案内してくれる伊那谷の2人と入った。彼らから面白い話を聞いた。ある渓流で公的機関によるショッカーを使った本格的な調査が行われたそうで、その渓流のイワナはヤマトイワナらしい。釣れないので、ここには魚がいないのではと思われているらしいが、すごい数のイワナがいることがわかったという。ニッコーにくらべてヤマトイワナは釣りにくいのだろうか。

同じ話は、おんたけの鈴木さんからも聞いた。ある2つの釣掘に片方はヤマト、片方にニッコーを入れたところ、ヤマトはお客さんのハリに掛らないので、ヤマトをニッコーの池に移したそうである。ヤマトとニッコーは警戒心などが違うのかもしれない。

もっとも白い斑点があるのがニッコー、白い斑点がなく、赤い小さい斑点があればヤマトと見かけでざっと区別しているが本当のところはDNAレベルでないとわからないようだ。

2つ目は安曇野のイワナである。つり人社から来年の雑誌用の取材をしたいという急きょの依頼。水曜に連絡があって、その週末の土曜日である。いつものことなので驚かないが、それにしても禁漁まであと10日なので、イワナしかない。

観光道路のすぐ横を流れる渓流でそこそこのニッコーイワナが数匹釣れた。釣りビジョンの撮影をした渓流で、そのときは明らかに体色も、模様も違う3種類のイワナが釣れたが、今回はいずれも背中が緑がかった、いわゆるグリーンバックのイワナである。

背中の一部にはサバ模様もある。こんなイワナを釣ったのも初めてである。放流ものとの交雑、その子孫どうしの交雑で、川の中はグチャグチャの多国籍、多民族状態なのだろう。

一口にイワナと言ってもこれだけ違う。では、ニジマスはどうなのだろうか。しっかり確認したことがない。9/27-28にコロラド州のボルダーで、テンカラサミット2014があるので今年も参加する 。

天然のニジマスに地域差や個体差があるのか、じっくり確認してきたい。日本ではニジマスはボロマスやニゲマスなどと言われ評価が一段低いが、天然ものはレインボートラウトと言われるように美しい魚である。釣れればの話であるが、レポートできればと思っている。