ジョンとポールの滞在記(その1)

 

23日にジョンとポールを中部国際空港(セントレア)でピックアップして、ただちに石徹白へGOの予定が、ポールが体調をこわし、キャンセルになってしまった・・・なんてこともなく車は順調に石徹白へ。

途中で白鳥の平田釣具店に寄る。事前に話してあったので平田さんが待っていてくれた。平田さんのまむし毛バリは魚よりも人を釣ることで有名で、そんなに人が釣れるなら帰ったらキングコブラの毛バリを巻くと・・彼らは言わなかった。

平田さんとも長いつきあいで、今から20年くらいの前の雑誌「テンカラ倶楽部」にも並んで紹介されたこともある。気のいい人なので、毛バリ巻きの実演、マムシの皮や、直径3cmにもなる馬の尻尾の束のプレゼントなどで、彼らは大喜びである。マムシの皮はベロっと舐めてから使うとマムシパワーがつくからとアドバイスする。

石徹白ではまず組合長に挨拶である。特別なはからいで石徹白漁区の無料パスを出してくれた。そして白山中居神社へ旅の無事と楽しい釣りを祈願に行く。杉の巨木と荘厳なたたずまいに日本の歴史と文化を感じたようだ。

ここはなんというのですかと聞くので「神社」と言うと「ジンジャーですか」。拍手は神様へのエールなのですね。だからジンジャーエールなのだ。

そして「あまご園」の生田さんに挨拶をしてから、まずC&R区間へ。

そこには見慣れた女性と男性が。東京から夫婦ともども仕事をさぼってきた小池夫妻である。ポイントを譲れと眼で脅迫して、ポイントを空けさせたところへ、プリーズと日本での第1投を打ってもらう。

高いレベルなので、ともに即、数匹を釣って満足の様子。イワナがほとんどだったが、ブラウンと習性が似ているとのこと。この日は夕マズメまでやってともに10匹を超えていたが、時差ボケでつらそうである。聞けば家を出てから石徹白まで30時間かかっているそうで、そのつらさはよくわかる。

今晩の宿は石徹白旅館である。スリッパで畳の上を歩いてはいけないとか、風呂に入ったら湯船の中で「はぁぁ」と言うのが日本の習慣だから必ず言わなければならない。もし、2人で入ったらお互いをみて、「Oh!ウタマロ」と言わなければならないとデタラメを伝える。したかどうかはわからない。

ポールは以前、来日しているがジョンは初めての日本の食事である。おきまりの箸の使い方である。戸惑っていたので、人指し指と中指で1本挟み、中指と薬指で1本。動かすのは上の箸だけと正しい箸の持ち方を教えるとスンナリできた。日本人でも箸をうまく使えない人がいるが、小さい頃に正しい持ち方を教えられていないからだろう。

いきなり3日目の夕方である。C&Rと本流、どっちが好きと聞くと「ホンリュー」というので、本流で夕マズメの竿を出すことにする。それまでも2日間、中居神社より上の本流で竿を出して、さっぱりだったので「日本の渓流は美しい、水は綺麗、だけどノーフィッシュ」と思われても困るので、ここならいるからと案内する。

ガンガンの荒瀬である。川幅が広く、場所によっては膝上まで立ち込まなければならない。こんなところではやったことがないようだ。シューズがビブラムソールなので、滑りやすいようでおそるおそるである。

この日は条件がよかったようだ。夕方5時をまわってからアタリが出だす。水温は13℃である。測ってないが。ラインを4号6m、ハリスを0.8号1.8mの仕掛けにする。肝心な毛バリは撃沈毛バリである。タングステンヘッドをつけて、荒瀬の中にドブンと沈ませる。

そしてかすかに上下しながらアタリをとる。ガツ、グンという感触が手に。荒瀬の中で尺ものを掛けると面白い。やっぱり自分は荒瀬のガンガンテンカラが好きだなとあらためて思う。

この日の夕マズメは尺イワナ3本、泣き尺2本、25cmその他が2本で私にしては大釣りである。中居神社で10円のお賽銭の御利益が出たようだ。

ごく普通の毛バリなら、この荒瀬の中を沈んでいかない。いかなる技術をもってしても無理である。ならば撃沈毛バリを使うのが合理的である。人生いろいろ、女もいろいろ、これもテンカラ、あれもテンカラである。

なに!話が違うじゃないか。毛バリは1種類でいいと言ったではないか。嘘を言ったのか?反省しろ!

「改むるに憚ることなかれ」「転石苔を生ぜず」である。つねにいいと思えばやってみる。ガラパゴステンカラ、ガラテンになってはいけないが信条。

ごくごく普通の渓流なら、ごくごく普通の毛バリで通用する。その場合は1種類で十分。しかし、こと荒瀬で釣ろうと思えばそれにあった毛バリに替えなければならないからだ。それが通称、撃沈毛バリである。フライではあたりまえのことである。これもテンカラなのだと広い心で楽しもう。釣れた方が面白いのだから。

いきなりNHKのテレビ放送である。7月18日(金)NHK総合、夜8時からの「金トク」で「命をつなぐ川へ 岐阜県石徹白の旅」が放送予定で、現在収録中である。NHKはこれまで「石徹白の在来渓魚を殖やす会」の斉藤さんたちの活動をおって、ショートタイムで折々、放送してきたが、まとめて45分番組にしようというものである。

岐阜県出身のタレントの敦士さん、黒崎めぐみアナウンサーが石徹白を旅してレポートするという設定で、ちょうどイギリス人が来ているということで、私も彼らも収録の対象になった。民宿ささきでの収録は40分ぐらいであったが台本では2分だったので、親戚にテレビに出るよと連絡しない方がいいだろう。

収録はさらに続くようで、6月7日、8日の石徹白フィシャーズホリデーでは敦士さんと黒崎さんにテンカラを、しかも竹竿で教えることになっている。そのときにはアメリカのユタ州から3人来るので、はたしてどんな収録になるのだろうか。

(つづく)