大物ねらい

 

「一跳三十」(ひとはねさんじゅう)という昔の言葉は1匹ハネるその下には30匹いるという意味だが、魚が少なくなった今では一ハネ10匹かもしれないが、見えないだけで実に多くの魚がいる。大物は底、あるいは中層を流れる餌を食っていて、まず水面に出ない。

テンカラは水面、あるいは水面直下で就餌する魚をねらう釣りであるが、底や中層にいる大物をテンカラで釣れないかと思って試行錯誤している。もし、確実な釣法がわかればテンカラの幅が広がると思うからだ。

結論は魚のいる泳層(タナ)に毛バリを送りこむことである。そのためには沈む毛バリを使うしかない。大物がいるところは水深があり、普通の毛バリではタナまで沈まないので送り込むのに限界があるからだ。

そこでタングステンヘッドをつけた毛バリを使っている。そんなのテンカラではないと言うかもしれないが、昔の職漁師も胴にヒューズや銅線を巻いた毛バリを使っていて、沈める手段として現代ではそれがタングステンになっただけである。タングステンヘッドの毛バリはフライでは常識である。

ハリスは可能な限り細く、長くした方がいい。流し方にも工夫が必要だ。なにより、少しでも泳層が違えば食わないので、タナを流れるようにこまめな重さの調整が必要になる。さらにパッと出る魚ではなく、ポイントも遠いのでじっくり粘る根気も大事である。

ある日、Sさんが沈む毛バリで散々流しても食わなかったので、ハリスにオモリをかましたら一発で来た。サイズは45cmの体高のあるニジマスである。おそらく、それまで頭上を流れていたのが、口の前に流れてきたので一発で食ったのだろう。

その日は、Tカメラマンの「ここ掘れ、ワンワン」の指示の場所を流して2本出た。45cmと42cmのニジマスである。キャッチまでに2分くらいかかっている。バーブレスだが、ゆるめたり、石に当てなければバレることはない(ように思う)。夕マズメなので魚が上ずっていると読んで、軽いヘッドの毛バリで正解だった。

アタリは実に小さい。ラインがかすかに揺れる、止る程度のアタリで2打数2安打だったが、Tカメラマンはその間にも「それアタリ、今のアタリ」と頻繁にジャッジする。

そこまでのミクロのアタリは私にはまだわからない。アタリはあるのだが見逃しているのがあるのだろう。水面や直下のアタリと違ったかすかなアタリをとるのもまた面白い。

高原川(蒲田川)のC&R区間で今年初めて竿を出した。去年までと違って大きいのが少ない印象である。最大でニジの35cm止まりである。これも底か中層でのアタリだった。

午前中はまずまずだったが、午後はピタリとアタリが止る。なぜ?その日は暑い日で(そう思っているのは私だけのようだが)午後からは腕まくりしていたので、早くも日焼けするような日だった。そう、余りの暑さで雪代が入ったのだと思う。釣れない理由を雪代のせいにしておこう。

下界では花粉は峠を過ぎたが、奥飛騨は花粉のピークだった。まぁ大丈夫だろうとマスクはしたが、水中メガネはしなかったので、目がグシャグシャの赤目うさぎになった。あなどってはいけない。