今年も北海道に

 

6月末、奈良の中山さんTenkaraUSAのダニエルと北海道へ。計画は中山さんにおまかせである。

私は今年で3年連続、ダニエルは初めての北海道である。私は毎年のようにアメリカに行っているが、私が廻った限りでは、私たちがアメリカの魚は大きい、とイメージするほど大きくはない。

テンカラのシステムで毛バリが届く範囲は、本流の支流のまた支流というようなところで、日本と同様にそこにいる魚は大きくはないからだ。

かねがね北海道の方が大きな魚が釣れると吹いていたので、それならぜひ行きたいとダニエルの今回の遠征になった。

2009年にTenkara USAを起業して来年で10年である。アメリカのみならず世界にテンカラを広める役割を果たしてきた。世界に発信するには英語でなければならないからだ。

海外のテンカラの創始者として起業してからこのかた、テンカラ業界に多くの企業や個人が参入してきたが、今もトップの座にあるようだ。

Tenkara USAのCEO(最高経営責任者)を、誰もが知る有名なアウトドアメーカーの60歳の経験者にまかせ、本人は会長になったようだ。つまり順調ということだろう。

私の家に夫婦で泊まったとき、ダニエルにうちわを持たせた。そして左手でうちわをあおぎ、懐に金をガッポ、ガッポ入れる左うちわのポーズを教えた。その意味がわかったようで、否定しなかったから、まんざらでもないのだろう。

業界のトップを走り続けるのは大変である。顧客をつなぎ続けるために、常に新しい情報を発信し続けなければならない。

撮った映像はInstagramとFacebookに、リアルタイムでアップである。それぞれに多くのフォロワーがいるようで、たった今、何をしたかをアップすると即時にリプライがある。20分前に釣った魚について、アメリカからリプライがあったのには驚いた。

このために重い撮影機材を常時、背負っている。つまり、まず撮影し、発信し、時間があればテンカラである。

はたから見てテンカラに集中できていない。ちょっと気の毒である。釣り旅行というより半分はビジネスのためと割り切っているのだろう。

 

 

ガイドは今年も道東、弟子屈にあるゆうあんの村上さんにお願いした。清潔なペンションで快適な3日 間を過ごすことができた。

今回の狙いは60cmオーバーのニジマスとアメマスである。湖のアメマスはちょうど60cmだったが、刀のように細い魚体で、長さの割にすんなりとキャッチできた。毛バリはモンカゲのドライである。

中山さんが金色アメマスを釣った。またオショロコマも。25cm程度であるがオショロコマとしては大きい。

ニジマスは利別川(としべつ)の50cmが最大だった。ガイドの村上さんから、ともかく北海道ではデッカイ毛バリを使えというアドバイス。サイズでは6番サイズか、もっと大きくても食うのは経験ずみである。

今回、有効だったのは村上さん考案でオレンジデビルと名づけた、ニンジンにハックルを巻いたような毛バリである。私はニンジン毛バリ、かっこつけてキャロットフライと名づけた。

オレンジの粘土のようなものを細かい目のフィルターで包み、ハリを通したもののようだ。完璧に浮き、よく見える。これを自然に流したり、ヒョン、ヒョンと引くとガバッと出る。

これは一体なんなのか。なんでもありの私でもこんなのアリかと思うので、フライマンならめまいがして卒倒してしまうだろう。

北海道の道東の渓流でテンカラをする限りにおいて、毛バリはでかい方がいい。水がクリアでないところもあり、さらに渕がなく速い瀬の連続なので小さい毛バリでは魚の目につかないからだろう。

利別川の50cmは左岸の壁スレスレのところから出た。ポイントは幅がわずか30センチくらいの狭いところだったので、ニンジン毛バリを上流から流し込んで、クイクイと引くと、チラッと顔を出した。

こいつは出るな。今度はくわえやすいように止めておくとガバッ! 一気に下流に走る。今回だけはハリはバーブつきなので、ジャンプされなれば外れることはないだろう。ハリスは2号だし。

それでも50mくらいは下っただろうか。なかなか寄らない。岸にズリ上げればとれるが、魚が痛むので、ネットでランディングすることにしたものの、股の間に入るなどでなかなか掬えない。

ダニエルに掬ってもらって一件落着。村上さんがメジャーで測り50cm認定である。竿は渓流テンカラの3.8mである。時間をかければ渓流テンカラでも天然ニジマスの50cmも取り込める。

教訓があった。湖で50cmオーバーを掛けた。強い奴で、なかなか寄らない。竿は本流テンカラである。目の前は急深なので、前には出れない。

魚が一気に沖に走りジャンプする。50オーバーのピカピカのニジマスである。その直後、あっという間に竿とラインが一直線となり、ピシッという音とともに、リリアンからレベルラインがすっぽ抜けた。

しまった。リリアンにコブをつけておけばよかった。悔しくて、ドンドンと足踏みしたので、当地方、その時間、震度2が記録されている。

いつもリリアンには二度通しで結んでいる。コブを作ると2番から1番(穂先)が抜けないので、乾かすときには抜けた方がいいからだ。これまでスッポ抜けるような魚はなかった。

実は、これを2回やってしまったのだ。3日後、同じポイントに立ち、リリアンにレベルラインを結ぶとき、「?」 はて、ここでなんかあったような気がしたが、なんだったか思いだせないうちに、二度通しでラインを結んでしまったのだ。

結局、この日もリリアンからレベルラインをすっぽ抜かれたのだ。私の頭の記憶中枢の海馬が、海馬鹿になってきたのかもしれない。

近々、中山さんがYouTubeに今回の釣行をアップするはずである。