イワナは釣られやすい魚、釣られた経験よりイワナの個体差 |
つり人2019年2月号(2018.12月25日発売)に「サカナにやさしい水辺の未来」という記事があった。水産学者の坪井潤一さんのキャッチ&リリースについての研究の紹介である。 どれどれ。暇なので記事のもとになる研究を探した。東大から授与された博士論文の研究にもとづくもの。さっそく論文の要旨を読んでみた。要旨(PDF)はこちら。 私たち釣り人の参考になるので、研究の概略を。 1. 富士川水系の88ヶ所の淵でイワナとアマゴの釣獲実験をした。あらかじめ生息匹数を調査しておき、餌釣りで釣った。その結果、イワナが17.9%(46/257匹)、アマゴが10.8%(90/830匹)でイワナの方が釣られやすかった。 日ごろ、イワナの方が釣りやすいと感じているが、やはりイワナは釣られやすい魚なのだ。 2. 北海道の4つの河川で、餌釣りでイワナの2回の釣獲実験をした。1回目で釣られたイワナ(標識をつけてリリース)と釣られなかったイワナに分けた。2回目は50日後に再捕獲したが、1回目に釣られたイワナも、釣られなかったイワナも再捕率に差がなかった。 50日もたてば、以前、釣られたか、釣られなかったに関係なく、同じような割合で釣れるのだ。 3. 北海道南部の支流で11回の釣獲実験をした。1歳以上のほとんどのイワナ(415匹)を捕獲し、標識をつけて放流した。餌釣りで11回釣獲実験をしたところ、平均で2.15回釣れた。オスはメスより回数が多く、また、大型ほど、過去に釣られた回数が多いほど釣られやすかった。 11回の間では、平均で2回は釣られるのだ。オスはメスより、また大型ほど釣られやすいのは、それだけ活発に餌をとるからだろう。釣られた回数が多いほど釣られやすい。ということは釣られた経験を学習するよりも、イワナの 個体差による方が大きいのだろう。 人間にもいるよね。同じ失敗を何度も繰り返しても、また失敗する人。イワナのような人が。 4. 餌釣りでハリを深く飲み込んだイワナ(77匹)を、ハリスを切ってリリースした。X線で体内のハリを調べた。体内のハリは平均で22日後に腐食が始まり、53日後に脱落すると推定された。 餌釣りではハリを飲み込まれることが多い。無理にハリを外さないでハリスを切れば生き残る。餌釣り師にはぜひ知ってほしいが、そもそもリリースを考えていな ければ、わざわざハリスを切ることはないだろう。テンカラでも万が一、飲み込んだらハリスを切りましょう。飲み込んだハリについてわかりやすく解説され ている。 補足 1では、イワナの方が釣られやすいという結果である。おそらくこの釣獲実験ではイワナとアマゴの混生域ではなくイワナ域、アマゴ域に分けて行ったものではないかと思う。要旨には書いてないので不明である。坪井さんは2017年に同じ富士川水系で、同様の釣獲実験を行っているが、このときも混生域ではないからだ。 https://www.youtube.com/watch?v=wEF-ga8snCc 仮に、混生域で同数のイワナとアマゴがいるとすればどちらが釣られやすいだろうか。昨年、長野県木祖村でテンカラ専用区の検討をしたときイワナとアマゴのどちらが釣れるかを調べた。 このとき500mの区間にイワナとアマゴの成魚をほぼ同数、同時に放流した。これを私と水谷さんがテンカラで釣ったが、2日間とも5:1の割合でアマゴであった。 混生域だと遊泳力のあるアマゴが餌が多く流れてくるポジションをとるので、アマゴの方が釣られやすいのではないかと思う。ただ、これは成魚の話である。 経験からすれば天然魚では魚の性質、生息環境からみてイワナの方が釣りやすいように思う。
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