日本初のテンカラ専用区を試し釣り

 

見通沢

栃木県おじか・きぬ漁協の三依(みより)地区を流れる見通沢が21年の解禁からテンカラ専用区になることが決まった。

私の知る限り日本初であり、同時に世界初である。昨年、初めて男鹿川を訪ねたとき、漁協に日本初のテンカラ専用区を設けることを提案した。

村おこし、地域活性化、知名度アップ、つり人の増加による漁協振興の助けになるのが提案の理由である。

そこから1年で栃木県の承認を得て専用区ができることになり、漁協のフットワークの軽さに驚くばかりである。

日本初は素晴らしことと思う。最初に手がける、一番になるのは様々な問題をクリアしなければならないからだ。

二番ではダメですかと言った国会議員がいたが、二番でいいと妥協したら、世界一のスーパーコンピューター富岳は出来なかった。

来年の解禁に先駆け、どのような区間なのかを地域おこし協力隊の田邊さん(ノムリエ)が案内してくれる。ノムリエは監視員であり、日々、監視業務で苦労している。

同行は(国立研究開発法人)水産研究・教育機構の宮本さんである。宮本さんはノムリエのテンカラの弟子になるので、私の孫弟子になる。

宮本さんは魚類学者なので、専用区の魚の生息数、サイズなどのチェックも兼ねている。

テンカラ専用区は三依地区を流れる入山沢の支流である見通沢に設定される。合流点から第1堰堤までの約1.5kmである。

2時間ほど遡行してテンカラ専用区として適していると思った。理由は以下である。

・渓流は広葉樹の渓畔林に囲まれているが、木が高く、毛バリを振るのに影響しない。渓畔林は適度な日陰をつくり、釣り人にも魚にも優しい。

・区間に沿って林道があり、どこからも簡単に入渓できる。このため監視も容易である。

・基本、砂の川なので遡行が楽である。事故が起きるリスクが少ない。

釣りをしたのは9/18で翌19日で禁漁。このため魚はすっかり抜かれている印象だった。釣れたのは21cmのイワナと18cmのヤマメだけである。

ノムリエの話では見通沢は魚影が濃いところで、4月からテンカラで釣れるようになり、6月ごろには良型が出るとのことである。

まったく人家がないので、水は限りなく透明である。砂が多く白い川なのでラインには赤系統のラインの視認性がいい。さらにフラットな流れが多いのでアプローチとロングキャストが決め手になる。

 

 

密漁者

テンカラ専用区ができると、同時に2つの問題点を抱える。

・その一つが密漁である。テンカラ専用区はC&Rなのでここには魚がいると密漁者に教えることになる。

・さらにC&R区間になれば魚は毛バリにスレるので、なかなか釣れない時期が来る。それにどのように対処するか。

密漁にはどこの漁協も頭を悩ませている。C&R区間が維持できない理由の1つに密漁があるという。

この日もノムリエが見つけた。我々の上流で餌釣りをしていたようで、ノムリエの姿をみた途端、竿を仕舞いだしたようだ。怪しい。

案の上、無券である。無券なので現場売りを買ってください。いや、俺は買わない。買わなければ密漁ですよ。密漁者呼ばわりとはなんだ・・

仕方ないので警察に通報。2台のパトカーが来て、警察官に事情聴取されてもなぜ買わなければならないのかの一点張り。

年齢は77歳。70歳以上は半額の750円なので、それに現場売りの750円で結局、1500円を払うことになった。この間、1時間余り。

警察官に漁協の皆さんに迷惑を掛けました、と言わなければとたしなめられても、なんで言わなければならないのかと警察官にくって掛かる始末である。

極めて悪質な常習者である。おそらく、これまでどこでも魚券を買ったことがないだろう。77歳である。こんな歳になるまで、言い訳と独善の人生を過ごしてきたのだろう。

本物の密漁者というのもおかしいが、夜中に来て、早朝、餌釣りでごっそり盗んでいく窃盗者がいる。C&R区間の維持にはこれら窃盗者対策が重要になる。

70歳以上半額は止めた方がいい。どんどん高齢化するので、やがて渓流釣りは高齢者で占められる。

しかもほとんどが持ち帰りの餌釣りである。むしろ、中学生、高校生を無料にして若い人を優遇する方がいいと思う。

それと現場売りの廃止である。現場で買えばいいというのは無券入川を認めていることである。監視員が来なければラッキー。来れば渋々で文句タラタラである。すんなり払うような人は入川前にちゃんと買う。

現場売りの廃止は無券者に対する監視員の苦労や、悪質な無券者から監視員のリスクを回避できる。

事前に入漁券を購入すること、無券であれば密漁とするというルールにすればいい。密漁はキツイ言葉なので、違反者とすればと思うが本質は同じである。

この日の密漁者騒ぎは無券入川者に対する漁協と監視員の苦労をまざまざと知るものとなった。

来年、4月中旬、テンカラ専用区開設イベントが開催される予定である。テンカラファンの方、多数ご参加ください。

ノムリエ