テンカラ三訓 ー私の場合ー |
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外出自粛も解除されたのでぽちぽちテンカラを再開している。 最近はWest Tail さんと一緒することが多い。歳は私より3つほど若く、健脚であるが、人は切らない。鮎の胴締めの名人であるが、人の首は締めない。なんのこっちゃ。 俺(たち)に明日はない。ケガしたらテンカラができなくなるので、ヨタヨタと渓流を歩く私の介護テンカラをしてくれている。 ずっと昔からテンカラを始め、なかなか釣れなかったようで、10年前に大学のテンカラ公開講座を受講。 そこから開眼。うそのように釣れるようになり、今では私を遙かにしのぐ腕をもっている。私の一番弟子、師範代である。 道場破りが「たのもう」と来たら、「師範代がお相手いたす」 「おまえではない。師範を出せ」「師範はヨボヨボで、顔に死斑が出ています」 「それは死斑ではない、老人班だ」 West Tail さんは地元の渓流で50cm、43cmのブラウンを釣る。このクラスになると偶然に掛けただけでは取り込めない。 竿、ハリ、ハリスと結び方、タモの万全な準備があってのことである。
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10年前にWest Tail さんのテンカラをみたとき、「これで釣れないはずがありません。自分の釣りに自信をもってください」と言った(ようだ)。 ほめて育てるので、誰にも言ったのだろうが、具体的には3つのアドバイスをした。 1. 自分の毛バリに自信をもつ:この毛バリでは釣れないと思っている間は釣れない。 2. 見切りを早く:出る魚は一投目で出る。基本は3回で出なければ見切る。上流にはその毛バリに出る魚がいる。 3. ポイントは自分で作る:ありきたりのポイントではなく、ここも、あそこもポイントだと、自分で探し出す。 つまり、毛バリを替えずに多くのポイントに効率よく打っていくのだから、それまでより、グンと釣れるようになるのは当然である。 シンプルに考える。私がしばしば「いいかげんがいい加減」「テキトーが適当」とギャグで言うのは、シンプルに考えることの別の表現である。 自粛中に、Patagoniaの創始者、イヴォンの「シンプルなフライから学んだこと」を読んだ。要は1本(1種類)の毛バリで何でも釣れる。シンプルであれというものである。 イヴォンとは2012年にモンタナで初めて会い、一日、一緒にテンカラをした。そのとき私が見たイヴォンのテンカラは文中の「 」そのもので、この方法でいくつかニジマスをキャッチしていた。 「下流に向かって45度の角度でキャスティングし、ラインをメンディングしてスイングの速度を落とす。 ラインがまっすぐになりはじめたらロッドをゆっくりと上げてラインをさらにまっすぐにし、ロッドティップを使ってフライに小刻みなアクションを加えてトゥイッチングする。 羽化中のカディスや古殻をもがきとろうとするメイフライに似せるのだ。十中八九、トゥイッチングのすぐあとにアタリがある」 2014年にPatagoniaはシンプルフライフィッシングのセットを発売している。 2017年にコロラドで会ったがそのときは一緒に釣りをすることができなかった。 1本(1種類)の毛バリでテンカラを楽しむ。選択する毛バリがないだけに、浮かせたり、沈ませたり、水面を虫のように引いたりして、あれこれ工夫する。 道具に依存しないシンプルなテンカラにおける想像と工夫は、むしろ釣りを豊かにする。 テンカラにはまる理由の1つに、想像と工夫の楽しさに触れるからではないかと思う。
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