釣りキチ三平 ー毛バリ山人の巻ー

 

天才、矢口高雄さんが亡くなった。

今から35年前、三人の子どもたち、そして自身のために中古で釣りキチ三平全巻を揃えた。息子はもとより二人の娘たちも主人公が男の子で、しかも縁の遠い釣りであっても釣りキチ三平は夢中になって読んだ。おかげで釣りへのよき理解者である。

今は孫が読んでいて、三平になりきって釣行を楽しみにしている。三世代にわたり読み継がれる釣りキチ三平は世界に誇る日本の名著である。

日焼けして赤茶けた第6巻、第7巻「毛バリ山人の巻」は今でも読み返し、その都度、矢口さんの才能に驚く。

おそらく矢口さん自身の体験ではなく、故郷、秋田の毛バリ釣り師の取材を通して毛バリ山人の発想が生まれたものと思う。

 

 

とりわけ、ウイングやテールをつけた「飛翔」「沈鐘」という毛バリから、それらをそぎ落とし胴とハックルだけの「山人黒バリ」にいきつく経緯は、伝承毛バリからヒントを得たものであろう。

ヤマメが毛バリをくわえるのは電光石火。ならば、毛バリ山人はその瞬間を水中と水面が同時に撮れるカメラで映像にして分析する。矢口さんの発想に驚くばかりである。

以前、TenkaraUSAのダニエルに第6巻、第7巻を贈った。釣りに言葉はいらない。世界のテンカラファンに読んでもらいたい名著である。

矢口さんありがとうございました。