川っぷち生きもの観察記

 

『川っぷち生きもの観察記』(若林 輝著 ヤマケイ新書)は、都市近郊を流れる、どこにもある川の、川っぷちの生きものをマクロで俯瞰し、ミクロで拡大した観察記である。

川っぷちにこんな生きものと、生態があるのか。生きもの小宇宙に驚くばかりである。

なんと、なんと、そんなこともあるのかと一気に読んだ。小さな字でびっしりなので価格(1100円)の割にお得感がある。

著者の知的好奇心は止まることを知らず、川ミミズの孵化にまで及ぶ。川の中にミミズがいるとは初耳だったが、ミミズの卵を持ち帰り自宅で孵化させてしまうのだ。

現役の頃は仕事がら乱読していた。リタイアしたので読むペースは落ちたが、この本は2021年の私のベスト3の一冊である。

川といっても渓流の川っぷちに立つ私には目に入るのはアマゴ、ヤマメ、イワナだけである。フッとまわりに気まわした折に、山菜や木の実に目がいくくらいである。

鳥や、小動物、植物の名前も知らない。これらをじっくり観察したこともないし、ましてやこれらの季節の移ろいも知らない。

これらの知識があればいいとは思うが、では渓流にたったとき、川っぷちの生き物をじっくり見るかと言えば、アブラビレのある魚しか目にない私には、他のものに気をまわすことはないだろう。

とは言いつつ、この本を読んでから、自転車で近くの水路のような川の土手を走るとき、白い鳥が水の中を見つめてジッとしているのが目につくようになった。

白いからシラサギかな、まさか振り込みサギではないだろう程度の知識しかない。これを機会に鳥図鑑を持って行こう。

夜の川っぷちの高速ウォーキング(別名、老人徘徊)のとき、キキィーというネズミの悲鳴が。暗い中にボンヤリと白い鳥。ネズミが襲われたのだ。

本の影響は間違いなくあるようだ。