自然繁殖しているC&R区間のニジマス

 

冬期釣り場のニジマス

 

「なんだ、ニジマスか!」

ニジマスはテンカラの対象魚としてランクは低い。ヒレがマルボロ、胸ビレが癒着している放流ニジマスは簡単に釣れる割に引きが弱いからだ。

 

ただヒレのピンと揃ったニジマスのファイトはピカイチである。さらにピカピカの美しい魚もいるのでヒレピンのニジマスなら釣りたいという人も多い。

 

大型ニジマスを放流した冬期釣り場が増えている。ハコスチを放流していることで人気なのが群馬県の神流川である。

 

オフシーズン、私は富士宮の芝川、三重県の員弁川、イベントで小田原早川へ行く。浜松の天竜川も大型ニジマスが放流されているがテンカラ禁止なので、このときはにわかフライマンである。

 

なぜテンカラが禁止なのかわからないが、監視するときリールがあればルアーかフライ。リールのないテンカラは禁止の餌釣りとの見分けが難しいからではないか思う。

 

大型ニジマスの強い引きはオフの楽しみである。小田原早川では70cmを越えるニジマスが放流されSNSをにぎわしている。

 

テンカラでは渡○さんの73cmが最高で、やがてハチマル(80cm)も釣れるかもしれない。

 

早川のテンカラ竿は大物用に開発されたシマノBGテンカラである。この竿でなければ、この竿だからこそ大物とわたりあえる。

 

放流ニジマスにくらべ自然繁殖ニジマスのパワーは格段であり、30cmのニジマスのファイトは放流ものの40cmぐらいのパワーがある うえ疾走スピードが速い。

 

私はニジマスの強い引きに魅了され毎年、北海道に足を運んでいる。過去50cmを釣ったことがあるが、取り込みに長い時間がかかった。次の目標は55cmである。

 

 

芝川特区 北海道 天竜川 石徹白

 

 

侵略的外来種

 

ウキペディアによればニジマスは1877年(明治10年)に移入された外来種である。

 

日本に来て150年近く、食用の魚、釣りの魚として定着しているのでニジマスが外来種であることをほとんどの人は知らない。

 

ニジマスは「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されている。ニジマスは「在来種のイワナ・オショロコマ・ヒメマスなど陸封サケ類を駆逐して占有する傾向にある。

 

一方、本州以南では定着が難しいため、内水面水産資源やフィッシング対象魚として放流が継続している」(ウキペディア)

 

北海道の多くの河川ではニジマスが繁殖し、在来種を駆逐している。私の経験では道東のある渓流で竿を出したとき、釣れるのはニジマスばかりで、一匹だけオショロコマが釣れたことがあった。おそらくニジマスが侵出する前はオショロコマなどの在来種の渓流だったろう。

 

本州以南では定着が難しいとのことである。たしかに釣り大会でたくさんのニジマスが放流されても、そこでその後ニジマスが増えたという話は聞かない。

 

なぜ本州でニジマスが自然繁殖しないかについては、放流してもすぐに釣りきられる、また本州には梅雨があり、卵や仔魚が梅雨どきの増水で流されるから、などとされている。

 

釣りきられるので繁殖しない

 

元東京都水産試験場主任研究員の加藤憲司さんがフライの雑誌第106号から「ニジマスものがたり」を連載している。

 

加藤さんの論文「熊野川水系上流部,山上川におけるニジマスの自然繁殖個体群」を7回にわたりわかりやすく解説したものである。

 

論文の中で加藤さんは本州でニジマスが繁殖しない理由について、釣られやすいニジマスの性質から、ほとんど釣り切られてしまうことをあげている。

 

釣り大会などでマレに残って繁殖したとしても、釣りの対象となる15cmぐらいではアマゴやヤマメとそっくりである。このためアマゴ、ヤマメとしてキープされてしまい、次の繁殖につながらないからである。

 

背ビレと尾ビレに黒い斑点があればニジマスであるが、誰もそこまで確認しない。私も1回だけ12cmくらいのニジマスを釣ったことがある。

 

そこは毎年ニジマス大会が開催される岐阜県の渓流である。一瞬、あれアマゴ?と思ったが斑点からニジマスとわかった。

 

このように本州でニジマスが繁殖しないのは、釣られやすいニジマスの性質から、放流しても釣りきられてしまうことにあるようだ。

 

C&R区間なら繁殖?

 

いいかえると持ち帰らなければニジマスは繁殖するのではないか。C&R区間はいわば禁漁区である。事実、C&R区間のニジマスは繁殖しているようである。

 

私の経験では芝川特別区、蒲田川のC&R区間、石徹白のC&R区間ではニジマスが自然繁殖しその数を増やしている。C&R区間ではないが長野県の天竜川でも釣ったことがある。

 

芝川は組合による放流、蒲田川は密放流とされている。石徹白の峠川は事故で流出したニジマスの末裔である。

 

芝川では30cm以下はほとんどヒレピンである。蒲田川C&R区間では8割方ニジマスである。ヤマメやイワナがほとんど釣れなくなった。とくにイワナが激減している。

 

石徹白の峠川も尺を越えるニジマスが釣れている。小さなニジマスが増え、アマゴやイワナが減ったように感じる。

 

このように持ち帰りのない区間ではニジマスが繁殖して在来の魚が減っているようである。

 

別にヒレピンならニジマスが増えてもいいじゃないかという考えもある。一方、いやいや在来魚が減るのは問題だという人もいるだろう。

 

加藤さんはこれまでのように釣り大会でニジマスを放流しても釣り切られるので問題ないとしている。

 

ただ言えることは在来魚の繁殖しているC&R区間にニジマスを放流すると、やがてニジマスに駆逐されることである。

 

それでもいいと考えるかは漁協や釣り人の考えになるが、駆逐された事例があることは知っておく必要があると思う。