高原二題

 

連日、うだるような、熱い風呂に入っているような暑さ。

標高の低い渓流は水温20℃を越えて魚はぐったりである。

ならばと涼しい高原でテンカラをと、高原を流れる渓流へ。標高で1500〜1750mを釣る。

この季節、毎年一度は訪れる渓流は平水より5cmくらい高く、水温は14℃である。

渓流は梅雨明け一週間と言われる。梅雨が明け、梅雨で降った水が引き水になるころで、しかも安定した晴天が保証されているからである。

案の定、入渓したその場から9寸クラスのイワナである。同行のと言うか、私のテンカラに介護で付き添ってくれた2人も良型の爆である。

テンカラ3年目のK さんはこれまでで最高の数と型をみた日とのことである。

高原の渓流も梅雨明け一週間が終わり、渇水になると釣りづらくなり、爆には雷雨や台風による増水を待たなければならない。

 

 

一日おいて開田高原へ。国道19号線から開田高原に向かう黒川沿いの道が高度をかせぐにつれて、気温が下がっていく。開けた窓から入る風はまさに天然クーラーである。

トンネルを抜けるとパッと視界が開ける。開田高原である。

御嶽山の頂までくっきり見える快晴の日で、7年前噴火した山頂からは今も水蒸気が立ち上っている。

この日、初めて開田高原で竿を出すというテンカラ1年目のSさんを冷川(つめたがわ)に案内する。

10時の時点で水温12℃。

御嶽山から直流の冷川はつり人にも冷たい冷川として知られているが、案の定、まったく、ウンスン、てんで、まるで、である。

なんでそうなるの?

魚がいないわけではない。いくらでもいる。何がきっかけか沸くように釣れることがある。

冷川を木村冷子(気むらで冷たい女)と呼んでいるが、玉二温子になることがある。冷子で女、温子は玉が二つなので男である。

女になったり、男になったり。水温でもない、天候でも先行者でもない。なんでそうなるの?

長い間、テンカラをしてきたので、今さら、数だ、型だと言うことはない。若い人に私の経験を伝え、さらにテンカラが広がることを願うだけである。

渓流釣りの半分をテンカラにしたい私の夢のために。