移動した渓流は冷川。4時を回ってそろそろ時合である。
うん!あれ!先行者が100m上流にいる。これは厳しいかも。
この頃になるとバチ抜けのキャスティングも次第によくなり、同時にどこに落とせばいいかわかるようになった。
時合とあって反応があるが先行者の直後なのでアタリは小さい。チッという微かなアタリに合わせた。今のアタリですか?
こんな小さなアタリもわかるようになったようだ。これは釣るようになるかもの予感どおり、先行者の後追いの2時間弱で、アマゴ3匹とイワナ1匹を釣る。イワナは23cmである。
先行者はなんと段戸川倶楽部のメンバーだった。お仕置きだ。
その夜は毛鉤巻き。#12の自己融着テープで巻いたバーコードステルスを量産する。
翌日も冷川に入る。夜半の雨で5cm増水し、水温が低下したのでウンズンである。これは海釣りで言う潮止まり。海の場合は潮が動き出せば釣れ出すので、大方の時間がわかる。
しかし渓流ではいつ釣れるようになるかわからない。夕マズメになれば食いが立つが、全然のときもある。
キャスティングは上達したものの安定しない。遠くに毛バリを飛ばしたい気持ちが先行して肘を伸してしまうからだ。
キャスティングは
1.バックキャストで竿をしならせる。
このとき強く跳ね上げ12時で止めれば竿は反動でしなる。跳ね上げが弱かったり、後まで倒れると竿はしならない。
2.しなった竿はしなり戻す。このしなり戻しを利用してラインを飛ばす。前は2時まで。2時で止ると毛バリから着水する。
このように書くと簡単だが運動技術なのですぐできる人と時間がかかる人が出る。
キャスティングは図のように手首を中心とした回転である。遠くに飛ばそうとして肘を伸してしまうとせっかくの竿のしなり戻しが活かせない。
ゴルフも野球のバッティングも回転運動なのでスウェーする(回転中心が移動する)とせっかくの回転が活かせない。肘を伸すのはスウェーすることなのだ。
こんなことをバチ抜けに教える。肘を固定して動かさなくなるとともに、飛距離が出るようになる。出過ぎて対岸の石や木を釣ることもしばしば。
ラインが左に飛ぶクセがあるので、まっすぐ飛ぶ方法も教える。
射程距離をつかむのが難しい。自分のキャスティングならどこに立てば狙ったポイントに毛バリを落とせるか、なかなか難しい。近寄りすぎて警戒され、遠い
ので届かず何度も毛バリを打つので警戒される。
テンカラはキャスティングが半分。キャスティングがそれなりにできて、魚の活性があれば初心者でも必ず釣れる。フックアウトも多いが魚との出会いは必ずある。
しかし、魚の活性をコントロールすることはできない。なんで食い気がないんだ こら!なんて怒っても仕方ない。
私が先に帰った後、バチ抜けは一人で冷川に入り、イワナを釣ったようである。まだまだ教えることはたくさんあるが、後は自分で経験を積むことでステップアップするだろう。
バチ抜けはテンカラが好きになったようだ。どこが好き?と聞いたら「言い訳」ができないところという。まさにテンカラの真髄である。
ルアーが、餌が、リールがなどの言い訳ができない。すべては自分の腕と状況判断。言い訳ができないところ、ダメなら仕方ないと諦めるいさぎよさがテンカラである。
私もそこが好きで50年続けてきた。それを初テンカラでわかってくれて師匠は嬉しい。
急に師匠になったりして、どこか頭に支障出ていませんか? |