輸出できた釣りテンカラ

 

6/5 中日新聞夕刊に海外に普及するテンカラが記事になった。

5月21日に郡上の牛道川で取材を受けたものである。30分程度、テンカラの歴史と海外へ普及している文化的な背景について話した。

記者は餌釣りからテンカラに転向して1年ほど。テンカラが面白くて仕方ない頃である。私のことを知って海外普及を記事にしたいと思ったようだ。

取材の前後は記者のレッスンである。マン・ツーマンの講習になった。

海外でテンカラをやる人が増えているのはYoutubeやSNSからわかる。テンカラタックルの販売、テンカラマンの投稿が増えている。

海外でTenkaraが本格的に知られるようになったのは2009年、ダニエルのTenkaraUSAの起業からだろう。英語で発信されなければ認知は進まない。

2009年以降、私はアメリカで7回、イギリスで1回、テンカラのイベントに参加して、講演、実釣した。その他、カナダ、韓国、台湾でもテンカラをやった。

アメリカやイギリスで講演し、一緒に釣りをするとき感じることは向こうの人がテンカラを知ってよかったと思っていることである。

同じ毛バリ釣りであってもフライフィッシングとは違うジャンル「日本の伝統的毛バリ釣り」という捉え方をしている。

フライフィッシングが足し算の釣りとすれば、テンカラは引き算の釣りである。最低限必要な竿、ライン(糸)、毛バリだけである。

それだけに当初はチープな釣りと思われていた(と思う)2009年にニューヨーク北郊のキャッツキルで講演とデモをした。

そのとき、リールもないのべ竿の釣り、ハックルと胴だけの簡素な毛バリ。テンカラはチープな釣りという意識を感じた。

テンカラは子どもの釣り。それを大人がする。

 

 

ところがいまや英語が通用するトラウトのいる国ではテンカラが行われるようになった。もちろんフライフィッシング人口にはとても及ばないが。

図はアメリカで過去一年間、Googleで「tenkara」が検索されたトレンドである。X軸は実数ではない。相対的なトレンドを表す。

このように季節変動はあるが年間通してtenkaraが検索されている。

竿とラインと毛バリというミニマムな釣りがなぜ海外で人気が出るのだろうか。いろいろ考えられる。

1. テンカラで十分釣れるではないか。フライフィッシングのようにあれもこれも持つ必要がない。

2. だからお金がかからない。フライフィッシングはお金がかかる。

3. シンプルだから釣りの楽しさをダイレクトに感じる。

4. 質素を重んじる日本文化の魅力がテンカラにある。

フライフィッシングもルアーも輸入された釣りである。テンカラは江戸時代、あるいはそれ以前から行われていた日本固有の釣りである。

テンカラは海外に輸出できた唯一の釣りかもしれない。鮎の友釣りも韓国で行われるようになったが、世界的な規模での輸出はテンカラだけだろう。

テンカラは、必要なもの以外はもたないというかっての質素な日本人の暮らしの中から生まれたものである。

ものにあふれ、もっとほしい欲望社会において、必要なもの以外はもたず質素に生きることをテンカラから感じているなら、海外普及の意義は大きいと思っている。