下戸でよかった。かな(2) |
||
その2を最後まで読んだ方に、素敵なお知らせがあります。 アセトアルデヒド その1を読んだ女性から、自分は強すぎてほろ酔いにもならないので、あまり飲みませんというメールが来た。いくら飲んでも酔わない人もいるし、一杯のビールで七転八倒する人もいる。どうしてこんな違いが出るのか、その話である。市民講座風にわかりやすく解説します。 アルコールは肝臓で代謝され、最終的に水と炭酸ガスになり排出される。その過程は非常に複雑。真ん中の図のアセトアルデヒドがくせものである。アセトアルデヒドは有害物質で ある。これを無害なアセテートにスムースに代謝できればいいが、私のような下戸はそれができない。なぜなのか。 アセトアルデヒドがアセテートになるには「アセトアルデヒド脱水素酵素系」が必要である。これにはT型~X型まで必要であるが、私には遺伝的にU型が欠損しているのだ。 U型は何をするかと言えばビール1杯のような少量のアルコールを代謝する。ところが私にはこれが欠損しているので、アセトアルデヒドをアセテートにできない。このため ビール1杯でアセトアルデヒドの作用をまともに受けてしまうのだ。 血管拡張 アセトアルデヒドの主たる作用は血管拡張である。つまり、私はアセトアルデヒドにより血管が拡張してしまうのである。血管が拡張するとどうなるか。 金太郎のように顔が真っ赤になる。拡張するので血圧が下がり、脳にいく血流量が減る。 これはいけないと心臓は心拍数を上げて血流を一定に保とうとする。このため心臓は120拍/分になり、はぁはぁと息があがるのだ。 脳血流量が一過性に下がるので気分の不快、吐くなどが起きる。コメカミの血管もぷっくり拡張するので、血管の中の神経が頭蓋骨で圧迫され、頭が痛ぁーいとなるわけである。
|
||
遺伝的に欠損している ところが酒に強い人は遺伝的にU型を持っている。このため少量アルコールが来てもなんのその。T型~X型まで総力をあげてアセトアルデヒドを さくさくと無害なアセテートに代謝するのだ。 なんで私にはU型が欠損しているのか。U型の欠損はモンゴロイドの特徴である。今から2万6000年前の頃、今の中国東北部に突然変異でU型が欠損した女性が生まれたことがミトコンドリアDNAでわかっている。 私はその子孫なのだ。誰なんだそいつは、出てこい(怒)。 U型があるのが普通なので、このタイプをNN(NはNormal)、私のように欠損タイプはDD(Defect)である。U型はあるが、活性が低いのがNDである。 活性の低さはNNの1/16ぐらいらしい。 NDは顔が多少赤くなり、ビールなら1本は飲めるが、それ以上は飲めない基本的に酒に弱いタイプである。 自分はそうだという人は多いのではないだろうか。なぜなら、日本人ではNNが50%、ND40%、DDが10%だからである。 私のような下戸は10人に1人である。白人、黒人は100%NNである。だから日本人は酒に弱い民族なのだ。自分のタイプはアルコールパッチテストで簡単に調べることができる。 モンゴロイドの特徴なので中国、韓国、モンゴルにも酒の弱い人はいるはずだ。酒のやりとりのキツイ国なので、飲めない人たちはどうしているのかと気の毒でならない。 私の家族のように私(DD)、家内(DD)だと3人の子どもは全員DDである。このため酒にまったく縁のない家族である。 NNとNNなら、生まれる子どもはすべてNNである。この家族は全員が酒に強く、酒を欠かしたことがなく、毎日が宴会家族である。 このように酒に強いかは遺伝で決まっているのだ。酒に強いからと威張るんじゃない。 NDとNDどうしの間では(その他の組み合わせもあるが略)、NN、ND、DDの3つのタイプが生まれる可能性がある。このため、兄弟でも下戸(DD)もいれば酒豪(NN)もいることになる。 私は5人兄弟だが一人だけ亀にように酒に強いのがいた。生まれる組み合わせからすれば納得であるが、お袋が父親が違うからと密かに打ち明けたので 、実はそうなのだろう(ウソ) 飲めば飲むほど強くなる では肝臓はどれくらい代謝できるのだろうか。平均で1時間に7gである。大酒飲みは10gにもなるという。 アルコールを幹線処理系とバイパス系でせっせとアセトアルデヒドに代謝する(左の図)。 このとき、バイパス処理であるMEOS系はトレーニング効果がある。トレーニング効果で飲めば飲むほど強くなる。アルコールをスムースに アセトアルデヒドに代謝できるようになる。さらにアセトアルデヒドをサラッとアセテートに代謝する。だからいくらでも飲めるようになる。 酒豪の誕生である。酒豪というと凄そうだが、たくさん飲まなければ酔わない体質になることでもある。最初はビール1本が5本になり、やがてもっと強い酒 をとウイスキーになり、そのうち1日にボトル1本あけてしまうようになる。下戸からしたら、なんて無駄な、むしろ気の毒に思う。 学生の頃、「お前が飲めないのは飲まないからだ。吐いて飲め、飲んで吐け。俺はそうして強くなった」と散々言われ、強要された。 先輩のいう経験則はこれなのだ。しかし、もともとDDなので飲むこと自体ができない。飲めば飲むほど強くなるのはNNの話である。先輩にはNNが多かった。 ビール1本にはおおむね23gのアルコールが入っているので、1本を3時間かけて飲めば酔わないことになる。ところがこんな飲み方はしない。「とりあえずビール、カンパーイ、グビグビ、プハァ」 つまり、代謝できないアルコールで次第に脳がマヒすることになる。右の図である。平均的にはビール1本で前頭葉のマヒが始まる。いわゆるほろ酔い状態である。この頃が一番気分がいいようだ。 理性とセクハラ このとき、理性のタガが外れる。そうなると「え? あの人がこんなことを、あんなことを」 私が下戸でよかったと思うのは、普段はがっちり理性で押さえているが、タガが外れて女子大生にセクハラして大学を首になっていただろうことだ。 大人なら「うーん、先生、エッチね」ですむことが、大人になりかけで耐性のない大学生ではそれはセクハラになるのだ。目つきがおかしい、よく私の後ろにまわる、マウスを持つ手に手を添えた・・・・etc。 これらはセクハラと訴えられかねない。師弟関係が良好ならいいが、一旦、悪くなると最悪である。それだけ大学の先生は 注意しなければならないのです。もし、アルコールで理性がマヒしたらと思うと、下戸でよかった。 ほろほろ状態で止めればいいのにもっと飲みたい。するとAの小脳がやられる。まっすぐ歩けないとか、ホームから転落などが起きる。 酒呑みはさらに飲みたいらしい。するとBの記憶を司さどる海馬がマヒする。なぜ自分はここにいるのか? どうして家に帰ったかまったく記憶がない、そんなこと言った憶えはないなど。 下戸からすると、こんなになるまで飲みたいのかと、バカにする醜態である。 さらに飲むと生命維持装置の脳幹がやられて死に至るが、普通はアルコールの鎮静作用でここまでいく前に寝てしまうので大事には至らない。 さまざまなことを総合して「下戸でよかった」 飲めないことは遺伝であって、自分の努力不足ではないこと。理性のタガが外れなかったこと。なによりこういう体質に産んでくれた両親への感謝の気持ちがより強くなったことである。ありがとう。 最後まで読んで戴いた方に素敵なお知らせです。 レポートの課題があります。これを読んだ感想を800字以上にまとめ、メール添付してください。レポートはかなわん、という人は甘いものでいいです(笑)
|